patorashのブログ

方向性はまだない

読者ハ読ムナ(笑)を読んだ

後輩くんと週に一度、週報を作るときにミーティングしているんだけれど、その時に読んでますって言われた本で、どんな本か聞いたら面白そうだったので私も電子書籍で買ってみた。

あらすじは、「うしおととら」や「からくりサーカス」などで有名な藤田和日郎さんと、その編集担当だった武者さんが、架空の新人アシスタントにアドバイスしていきながら漫画家としてデビューするまで色々とアドバイスをするという話です。

うしおととらにしても、からくりサーカスにしても、大学の近くの漫画食堂で読破したんですが(20年前近くじゃねーの…)、どっちもあんまり内容覚えてない…けれど、からくりサーカスはめっちゃ面白かったという記憶だけある。持っていない漫画のストーリーすぐ忘れてしまう。

話が脱線してしまったんですが、めっちゃ為になりました。

序盤の話

序盤は、まずアシスタントとして藤田さんのスタジオに入ることになるので、そこでルールを教わります。それが「無口禁止」。理由は色々と語られていますが、

  • あなたは新人だからどういう人かわからない
  • あなたも周囲の人のことがわからない
  • コミュニケーションを取って、お互いにどういう人かわかりあいましょう
  • 信頼貯金を作りましょう。話さないと貯まりません
  • 新人は信頼貯金がゼロなので、しっかりわかってもらえるように動きましょう
  • いいヤツじゃないと信頼貯金は貯まらないよ
  • 他人に興味を持ちましょう!

という感じだったと思います。

その話の後くらいに、今度は「映画を一緒に見る」というのがありました。映画を見た後、その映画の評価を点数付きで発表して、その理由をちゃんと言葉にする、というものでした。これも後々の話で出てくる理由も含めて書くと、

  • その人の着眼点がわかるようになる
  • どういうジャンルが好きとかの傾向がわかるようになる
  • ふんわりした理由はダメ。なぜ好きか、嫌いか、ちゃんと理由を考えろ。
  • これは、自分の漫画を客観視するための訓練でもある
  • 漫画のネタのヒントや気付きを貰えることもある
  • 「あの映画の爆発のシーンみたいな感じで描いて」で伝わるようになる

みたいな感じだったかな。

なんかこのあたりの話を読んでいたら、「めちゃめちゃチームビルディングやん」と思って読んでました。特に映画を一緒に見るの件(くだり)は、私が読書会やっているときの狙いと結構似ていたので、違う業界でも似たような手法があるんやなぁと興味深く読みました。

ネームへのダメ出し

新人漫画家なので、連載を狙うべく、アシスタントをしながらネーム(話の下書き)を描いて、編集の武者さんのところに持ち込んでいくわけですが、そこで色々とダメ出しされます。そして、ダメ出しされた内容を元に藤田さんが「武者さんはこう言いたかったんじゃない?」とか「自分のときはこうだった」というアドバイスをくれます。とはいえ、そのネームに対しても藤田さんからのダメ出しもあります。

これも完全にコードレビューと被ってて面白かったんですが、この新人漫画家は武者さんダメ出しされて傷つくんですが、コードレビューでもコードのダメ出しをしているのに人格攻撃をされたと受け取ってしまうことがありますよね。

このあたりについて、藤田さんが「ネームに対する思い入れが強いから傷つく。自分に対するダメ出しだと思ってしまう。でも、ネームに対して言ってるだけよ。もっと良くなってほしいから言ってるの。自分たちが映画を見た後に点数つけてるのと一緒」というふうに言ってます。いやもうホントにその通り…。まぁ必要以上に汚い言葉を使ってレビューする人もいることはあるので、なんとも言えないんですが、それはまぁその人の問題ってことにして…。

他人の批評は素直に受け取りなさいってことと、批評でわからないところがあったら質問しまくれって書いてあって、「素直さは大事よ…」と頷いてました。レビューで人のコードを読むこともあるでしょうし、どういうコードが世間一般で良いコードと言われているかを探求することで、自分のコードを客観的に見られる視点を身に着けないと、レビュー受ける度にグサグサ傷ついてしまう。とはいえ、傷つきたくないからと殻に閉じこもられてしまうと非常にやりづらい。漫画の業界でも、ダメ出しが嫌になって辞めちゃったり、同人誌を描く方に行ったりという話がありました。(※別に同人誌を批判していたわけではないです)

その他のところ

それからもネームや絵にダメ出しされ続けて、言われた通り修正してもまたダメ出しされて…という感じで、なかなか心にくるものがあります。 途中では、同期の漫画家が連載をスタートさせたりしていて、焦りを感じているときもありました。流行のジャンルの漫画を描かないとダメなんじゃないか?とか、知り合いの出版社なら漫画描けるよって誘われたりとか。 しかしまぁそれも本質的なところの「キミは何が描きたいの?どこ(の出版社)で描きたいの?」っていうところに帰結していきます。

何を軸にしてエンジニアとしてやっていくか、という話とか流行の技術に振り回されたりするような話と似ているなぁと思いながら読んでました。そして、「外ではなく内を見つめろ」っていうアドバイスがズーンと突き刺さりますね。自分の価値観・情熱をしっかり持つこと。内省についてまで書かれていて、なんてすごい本だ!と思いました。

どんな業種の新人でも結構当てはまるのでは?

まぁ私はIT業界なもんですから、そういう視点でわりかし藤田先生に感情移入しながら読んでました。 プロを志すのであれば、楽しく面白く心構えを学べる良書だと思いました!

藤田さんや武者さんが話しかけるような形式の本なので、スルスル読めますし、単純に漫画家がデビューするまでの世界の話としての読み物としても面白いですよ!