TLで見かけていて、面白そうだから買っていたのに積読していたので、消化した。
著者はクレディセゾンのCTOの小野和俊さん。プログラマ出身の経営者ならではの視点で、プログラマには非常に面白い読み物だった。若手にも中堅にもベテランにも刺さる内容だろうと思う。
タイトルは刺激的だけれど、言ってるのは「後戻りできないと思い込んでいるようなものをちゃんと見つめ直して、止めれるのであれば止めよう」というところだった。
手段の目的化になっていないか?
失敗しやすいパターンの話など、あるある過ぎて唸ってしまう。顧客を見ずに無理やり差別化とか、上司の思い付きをねじ込むとか。
また、新技術を使いたいから、製品を作るなど…。新技術は枯れていないため、問題が発生したときに解決し辛かったりするので、すぐに投入するのは危ない。 あくまでも、その技術がどう課題解決に役立つのか?という視点が重要である。
技術には触れておいて、本当に投入するべきときに投入できるようにしておくのがいい。
正しいDXとは
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、CX(顧客体験)かEX(従業員体験)の改善のどちらかが必ずセットでなければならない、とあった。デジタル技術を入れればDXではない。めっちゃ頷いた。
現実的に対応するには?
未知のものにはDCAP
未知のものには、PDCAではなく、DCAPという話があった。未知なので、体験から学習していかなければ効率よく進められない。例え話で、「サッカーをやるのに最初にルールブックを読むところからは始めない。まずボールを蹴ってみる。ゲームに参加してみるところから、こういうものなのかと学んだほうが早い」とあったが、だいたいのゲームなどはそうだ。
新技術の習得などはまず使ってみると便利さが分かってくるものだし、逆に課題も見つかりやすい。
読んでいて、アジャイル開発との相性がよい考え方だと思った。
PDCAが向いている領域
ミスが許されなかったり、要件が変わることが許されない、関係者が多い場合などはPDCAが向いているというか、DCAPが向いていない。ウォーターフォールと似ている。
製品も成長戦略も「谷を埋めるな、山を作れ」
欠点は指摘されやすい
製品にしても人間にしても、どうしても欠点に目が行きがち。欠点を指摘することは簡単で、修正することも、やるべきことが明白なので比較的やりやすいけれど、本当にそれが顧客の価値に直結するのか?谷は他の製品が世に示した価値なので、その製品の特長にはなりにくい。
本の中では、大手が競合商品を出してきたときに、自社製品と比較してしまうと、明らかに劣ってしまう部分があったけれど、その谷を埋めるのは最小限に抑えて山を作ることに注力した結果、多くのユーザーを獲得することができたという話があった。山がなければ、ブランド勝負・価格勝負に陥ってしまう。
ラストマン戦略
ラストマン戦略とは、そのグループ内でのスペシャリストを目指す成長戦略のこと。この技術について、この人に聞いてもわからないのならば仕方ない、というところまで極める。これもまた山を作る戦略だなと思う。 この人はこういう人!というブランディングにも役立つだろうし、頼りにされるので成長を実感しやすくなる。新人であっても、役に立っていると感じられるようになるので、何かしらに照準を絞ってスペシャリストになっておくのは、いいことのようだ。それに、お互いに足りない部分を学習しあえるので、相対的に仕事のレベルの底上げができそう。
誰がどの分野のラストマンになるのか?というのは、話し合っておいて競合しないようにしておくとよさそうだった。 もし、競合する場合でも、更に細分化して一位を目指せばいい。
キレる人も大事
士気を下げるほどキレ散らかしている人は流石に問題ではあると思うが、キレる人は何故キレるのか?を考えると、更なる高みを目指しているからで、その熱量で熱暴走している状態だという。そういう人の熱量を使って、更によい方向にもっていくようにしたい。温和な空気は、ぬるま湯になっていないか?ということでもあり得そうだ。
効率化の鍵
繰り返し処理を攻略せよ、という節があったのだが、そこに書いてあることが非常によかった。繰り返し処理のパフォーマンスチューニングをすると、小さな改善であっても何回も繰り返すため、物凄い効果を発揮する。 ハードウェアを替えれば効率化できるものは、さっさとハードウェアを交換する。常にルーチンワークを自動化できないか、少しでも効率を上げられないかを考えていきたい。
ルーチンワークを遅くするものには敏感になっておかないと、どんどん時間を奪われる。
ペアプロの話
ペアプロの話があったが、これもまた面白かった。fukabori.fmのt_wadaさんの回を思い出した。
人は見られるとカッコつける、集中する、ノウハウを提供する、柔軟になれるという点が書いてある、本当にそうだなぁ~と思う。もっとペアプロやったほうがいいかな…と思えてきた。
楽しさに触れる。頑張るキッカケを作る。
序盤にあった「体験会」の話が、すごくよかった。暗号通貨になんとなく懐疑的だった人たちに対して、ビットコインを配布する体験会をやったことで、一気に暗号通貨を理解してもらったり、身近なものとして認識してもらうことができたとあった。それと同じような感じでクラウド体験会をインフラエンジニアに向けて開催したり。参加者は新しい技術に触れてやる気が出てきたとのこと。
これはDCAPのDを準備するということだけれど、Dまで進むと人によっては一気に道が開けると思う。
あとがきでも、勉強ができなかった筆者についた家庭教師が、勉強そのものだけではなく、勉強した先にある世界を見せてくれたのが、勉強を頑張るキッカケになったという話があった。勉強した先にある世界を、今まで見せられてきただろうか?と自問自答すると、まだそこまでできてなかったかもな…と思う。それぞれがもっと積極的に得意分野のハンズオンを開催していけるようにしていきたいと思った。