patorashのブログ

方向性はまだない

システム化は無機質な管理ではなく人間性を尊重した管理が可能になる

バックオフィス系の運用の効率化を行う際に、結局使われないとか、開発側の独りよがりになったりしないためにはどうすればいいかを知りたくて読んでみた。実はずいぶん間から家に置いてたし、何回か読んでたんだけれど、再度読んでみた。

事務の「見える化」が会社を救う

事務の「見える化」が会社を救う

日本人は「捨てる技術」が身についていない

筆者は国内と海外の銀行に勤めていた経験があり、日本と海外のシステム設計の違いを教えてくれた。

  • 日本のシステムは、1つのものを流用して全てに対応しようとする。あれもこれもと詰め込む。結果、網羅的なテストが必要となる。組み合わせ爆発が起きやすい。
  • 海外のシステムは、複雑な箇所用のシステムを新たに作る。結果、影響がシステム毎の範囲で済むため、必要最小限のテストでよい。

日本のシステムは、旧来のシステムを捨てることができずに延命に延命を続けるため、システムを刷新したくても肥大になりすぎていて手がつけられないということもよくあるらしい。このあたりはなんとなく感覚的にそうだなぁ〜と実感した。

効率化・システム化の落とし穴

効率化やシステム化は、自然と抵抗勢力が生まれてしまい、なかなか上手くいかないと思うので、そこをどう乗り切るのか?という点を本を読むときの質問として考えていた。そこを注意深く読んでいくと、発見が多かった。

効率化は顧客目線でプロセスチェックすることが重要

独りよがりの効率化になると、顧客を置いてけぼりにしてしまい、顧客満足度が下がり、顧客が離れていってしまう。お問い合わせ窓口などの効率化を目指した場合によくハマるものだという。自動応答システムなどを導入して、たらい回しにされているような感じになったり、なかなか繋がらなくてイライラしたりなどだ。また、事務のミスというのは、「ないのが当たり前」というふうに思われているので、少しのミスであっても顧客への信用は一気に落ちてしまう。

効率化・省力化を目指すにしても、顧客を失っては元も子もない。信頼を失わないプロセスを構築しなければならない。

効率化は「○○の神様」によって阻まれる

例えば、経理の神様とか、事務の神様など、属人性が高くなってその人しか処理できない業務がある場合など。なぜ阻まれるかというと、効率化によって、その人自身が不要になるのではないか?という怖れからだったりする。そのため、一般的な顧客分の処理を行うシステムを作ると、重箱の角をつついて、ダメだししてくる。ここで、前に書いていた「1つのものを流用して全てに対応させようとする」という、よかれと思ってのダメ出しによって阻まれるそうである。

その意見に耳を傾けすぎると、いつまでたっても完成しないか、業務フローが複雑になりすぎてコスト高になってしまう。そのため、そういう神様たちの居場所を作ってあげる必要がある。

99%の顧客が満足するメインストリームを作る

例外は、1%程度だろうという想定で、99%の人が満足するメインストリームを完成させる。システム側でその1%に対応するように頑張るとコストがかさむので、やらない。1%は別の方法で対処したほうが安上がりである。なによりメインストリームの速度を落とさないことを重視する。

メインストリームを作るに当たって、事務のプロセスを見える化する必要がある。見えないものは管理できないからである。本線だけを明確に作り、例外は全て本線から退避させる(これが1%)。では、退避させた1%はどうするのか?そこに、事務の神様を置く。そもそもその1%は神様しか処理できないものばかりなので、エキスパートに任せたほうがいい。

また、時間が経過していくとその1%の中でも傾向が見えてくるものがあるので、それをまたシステム化できるか検討、というサイクルを回す。

改革の肝は人

人の気持ちを無視して仕組みを真似ただけでは上手くいかなかったり、定着しない。最終的には人次第。

システム化によって働きやすい組織に

システム化されたことで、個人的なスケジュールの見える化が行われるようになったという。 保育園の送り迎えなどがある人などは、先にそれをシステムに登録しておくと、時間になりそうだったら表示され、マネージャーもそれを把握しているので無理な仕事の割り振りは行わないようになる。

また、時間単位で作業量を計測しているため、時間によって効率が落ちてくる場合は、その時間帯は気分転換に違う仕事を割り振ったり、もともと苦手そうな場合は異なる仕事をふったりなど、もっとも得意なことが何なのかを探れるようになった。わざわざ苦行を行わなくても、得意なことで気分良く働いてもらえるようになる。

システム化することによって働きやすい職場になるよう、人間性を尊重したシステム作りに力を注いだという。

キャリアパスを作ってあげる

事務仕事といってもメインストリームの仕事だけでなく、例外的な仕事も処理できるようになっていく必要があるので、認定制度を作り、自分はどれだけの仕事ができるようになった、どれくらいの立場で動けるようになったなどをわかるように、またモチベーションを高く保てるようにキャリアパスを作ってあげることも大事であるそうだ。

同じ組織で働き続けていると感じるのが、この漠然とした「このままでいいのか」という不安だと思う。ステップアップしているのだという認識と、周囲への認知は大事だと思う。

徹底した教育、社会人としてのルールを教え込む

著者の会社では、半日の研修後にすぐ実戦投入できるところまで仕事が分解されているらしい。なので、いろんな経歴や国籍の方が非正規として雇われて働くらしいのだけれど、そこで大事なのが、どれほど大事な仕事をしているかという認識と、ルールとマナーの徹底であるらしい。

特に、アルバイトで来る人は、アルバイトを渡り歩いてきていて、ルールやマナーの研修などを受けたことがない人も多いらしい。ルールやマナーを教え込むというと、なんだか社畜にしようとしているのでは?というふうに思うかもしれないが、そうではなく、どこにいっても通用するように、ということらしい。もちろん教えていないと仕事がスムーズにいかないからというのもあるんだろうけれど、そこにコストをかけてアルバイトをちゃんと教育するのも、肝は人であるということをわかっているからなのだろうと思う。

マニュアルが絶対!

「よかれと思っての改善が事故を招く」という例が書かれていて、めちゃくちゃありそうだなぁと思った。マニュアルが守られずに独自ルールを採用していくと、マニュアルが形骸化してしまい、誰も見なくなるし、新しく雇った人の教育が大変になる。マニュアルの更新は熱意と根気でやっていくしかないということだった。ただ、マニュアルに手順だけを書くのではなく、何故こう書いてあるのか、というプロセスも学んでもらわないといけない。腑に落ちないから勝手に改善しようとしたりするのだろう。

段取りを考える習慣を教え込む

これはものすごく大事だと個人的に思う。スケジュールだけ考えさせると、それっぽいものは出てくるけれど、じゃあそれをどう実現させていくのか、という段取りにまで落とし込まないと、物事がスムーズに進まずスケジュールがガタガタになったり、無理なスケジュールを守ろうとしてミスや事故を起こしてしまう。段取り力こそが、仕事のできる、できないを左右するものではないかと日頃から感じている。

レポートラインを守る

レポートラインってなんだろう?と思っていたのだが、自分の上司との指揮系統のことだった。レポートラインを守るとは、どういうことかというと、仕事をしていると突発的に自分の上司以外から頼まれ事が発生したりすることがあるかと思うが、例えその頼み事をしてきた人が偉かろうと、自分の上司以外の命令には従わないということだ。それを許してしまうと、指揮系統の規律が乱れてしまう。仕事の速度も変わってしまう。マネージャーの知らないところでそんなことが発生してはいけない。マネージャーのところで調整するなどのプロセスを経る必要がある。

システム化にあたって

システム化に取り組む際、いいシステムはみんなの意見を取り入れては作れない。衆愚政治のようになってしまう。 ワンマンだとスピードが出るし、責任感を持って取り込むことができる。周囲からは文句が出るかもしれないけれど、進まないよりはずっといい。

気づき

やはり人が肝である。日本的なシステムもいい部分はあるんだろうけれど、モリモリになって完成しないとか、本当によくある。バックオフィスの効率化に関するハマリどころについて、知りたいことが書いてあったのでよかった。特に抵抗勢力になってしまう人たちに活躍してもらうところはよかった。ここには書いていないが、本の中でよく登場する銀行のシステムの話などもとても面白かった。