patorashのブログ

方向性はまだない

自閉症の人の綴る言葉はすごく心に突き刺さる

自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫)

自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫)

我が家は長男が自閉症と診断されていて、現在は療育施設に通いながら通院も時々しつつ…という生活を送っている。長男はまだ話すことができないので、話せるようになるためのヒントがあればと思い、Amazonで色々と本を購入して勉強しようと思っているときに見つけた。自閉症の人が綴った本。タイトルが「自閉症の僕が跳びはねる理由」なんて、すごく気になった。自閉症の子の特徴として、その場でグルグル回ったり、ピョンピョンと跳びながら大声を出したりというのがあるのだけれど、うちの子も正にそれが当てはまっているから、それの理由がわかるのなら、純粋に、知りたい。そう思った。

東田さんが中学生の頃に書いた本で、訓練の末に、文字盤を使ったりパソコンのキーボードを打ったりして筆談ができるようになって、この本を書いたらしい。そして、本を読んだら(言い方が悪いのは承知の上だけれど)ちゃんとしてそうなのだが、会話でのコミュニケーションはできないし、声が出るのを抑えられないとか、どうも軽度の発達障害とかではないみたいだった。

本は、質問形式で58個あり、それに東田さんが答えていく。

想像もできない感覚

健常者からすると、全く想像もつかない感覚であることがわかった。時間の感覚が違うこと、自分の体をちゃんと認識できないこと、すぐ忘れてしまうこと、思っていることが言葉に出ないこと、逆に思っていないことが言葉に出てしまうこと…。そして、精神はちゃんと成長しているのだけれど、他人とコミュニケーションがとれなかったり、物事をうまくできなかったりするから、すごく小さな子ども扱いをされて傷ついてしまうとか…。体が全く思い通りにならないというふうに書いてあるのが健常者としては「いやいや、自分の体やん!」と不思議に思うのだけれど、心と体の意思疎通がうまくできない、という状態のようだ。

悲痛な叫び

心で思っていることと、体で行われる行動が伴わないため、誤解されることが多く、それですごく傷ついたり、辛かったりするそうだ。「手をつなぐのが嫌いですか?」という質問のところで、「いやではないけれど、他に興味があるものが目に付くと、手を振りほどいてそちらに行ってしまう。自分でもいつ手を振りほどいたのかわからない」という答えがあるのだけれど、うちの子ももしかしたらそうなのかもしれない。

突然泣き出したり、笑いだしたりするのも、時間の感覚がわからないからか、辛いことを不意に思い出したり、楽しかったことを思い出したりして、急になってしまうらしい。こういうことも、よくある。

声をかけても無視するのはなぜ?という質問にも「声をかけられていることに気付いていないから」という、全く想像もしていない答えだった。てっきり、言葉が理解できてないからなのだと思っていた。だって、あれだけ目の前で声をかけたり、ジェスチャーしたりしているのに、気付いていないなんて!でも本当にそうなんだろうなと思えた。「名前を呼んで、気付いてから話しかけてほしい」という答えに、自分も気を付けようと思った。

質問の答えでたびたび、根気よく助けてほしい、理解してほしいというメッセージが伝わってきた。親がそんなふうに思うなんてと思われるかもしれないが、本当にしんどくて、どう接すればええんや!とストレスになることが度々ある。しかし、その態度こそが彼らを傷つけてしまうことにもなるし、こっちを落胆させていると感じて、申し訳ないと凹んでしまうらしい。感受性は強いのだと思う。だからこそ、その行動への理解が大事だ。

知りたかったことばかり!

あくまで東田さんの感覚であって、うちの子の感覚ではないので、必ずしも一致しないとは思うけれど、偏食の理由とか、バイバイするときの手の平が自分のほうを向いている理由とか、ダメなことを繰り返してしまう理由とか、すごく腑に落ちた。これはこう言われないと絶対にわからないと思う。何度も書くけれど、自閉症の子の行動の理由が理解できるようになると、気持ちに受け入れ態勢ができるので、寛容になれると思う。そうでないと、本当にしんどいだろう。いい親であろうとすればするほど、うまくいかないことで「私たちの何が悪いのか?」に気持ちがフォーカスしてしまい、頭ではわかっていても、つい自分たちを責めてしまう。

理解から、寛容さと余裕が生まれる。理解できれば、根気よく手伝うのを頑張ろうという気持ちになれる。

絶対に読むべき

もし自閉症児が身近にいるのであれば、対処法とかの本よりも優先して、絶対に読んだほうがいい。私も常々、「なんとかして直せないか、よくできないか」と、よく考えてしまっていた。そういう気持ちが先走ってしまう前に、本人の感覚・感情に理解を示して、寄り添えるようにならないと、お互いに幸せになれないのじゃないか?と思う。自閉症は本人はもちろんのこと、周囲の人も含めて、直すものではなくて長く付き合っていくものだと思うので、より理解を深めていくよう努めていく。

東田さんは何冊も本を出されているので、できるだけ読んでいこうと思った。